食・料理
  ホーム食・料理イギリスの料理・食材まるごと食べる!>vol.2 マーケットにて

 
  試してみたいイギリスの代表的な家庭料理とスーパーマーケットで手に入る食材/既成食品

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シリーズ まるごと食べる!イギリス
Vol.2 本物のカンバーランド・ソーセージを求めて
ボロマーケット (Borough Market) 昔ながらの手作りカンバーランド・ソーセージを求めてロンドン中心部のボロマーケット (Borough Market) にやってきた。シティ(金融街)からロンドンブリッジを渡ったテムズ川の南岸にあるボロマーケットは、今年250周年を迎えるロンドンでももっとも古い市場のひとつ。毎週金曜土曜には、英国内のみならず欧州の各地から様々な食品が集められ、約250のテナントがところ狭しと立ち並ぶ。摘みたての野菜・果物から、新鮮な肉や魚、産地直送のチーズや乳製品、手作りのパンやケーキまで、ありとあらゆる『うまいもの』が一堂に会す、食いしん坊にはたまらないエキサイティングなマーケットだ。

湖水地方カンブリアでイノシシや珍種の地ブタを飼育・加工するシフィールドファーム (Sillfield Farm) は、1998年からこのボロマーケットに出店している。約20万平方キロに及ぶ農場の敷地の大部分は手つかずの原野で、イノシシや地ブタを野生に近い状態で育てるには最適の環境だ。

食用ブタを大量生産する農場では、座ったり寝転んだりする隙間もないほど多くのブタが家畜舎の中に詰め込まれることも珍しくないという。1匹のメスブタに年に25匹ほどの子どもを無理やり産ませるのが通常で、産む母ブタの身体はすぐにボロボロになってしまう。そして産まれたコブタはというと、なるべく早く食肉として市場に出せるよう化学飼料やホルモン漬けにされ人工的に太らされるのだ。

シフィールドファームでは、できるだけ自然のサイクルにまかせてイノシシや地ブタを繁殖させているため、メス1匹につき1年にだいたい8から10匹の子どもが誕生するのみという。産まれたイノシシや地ブタの子どもたちは、広大な農場敷地内で完全に放し飼いにされる。飼料もホルモンや添加剤を一切含まない自然なものが与えられる。こうしてたっぷり時間をかけてのびのびと成長した家畜たちは、やがてファーム内の自家工場で屠殺・加工されるのだ。

 本物の味の裏にあるのは・・・
約30年前の創業当初のシフィールドファームでは、オーナーのピーター・ガットさんの家庭に代々伝わる伝統的なレシピにのっとったカンバーランド・ソーセージのみを生産していた。しかしその後研究と試行錯誤を繰り返し、現在ではさまざまな素材と味付けを組み合わせて14種類のソーセージを作っている。主原料の肉はもちろんのこと、ハーブやスパイス、野菜などもできる限り地元のものを用い、家族と小数のスタッフによる完全な手作りを守り続けている。

とくに、トラディショナル・カンバーランド・ソーセージ、イノシシ肉ソーセージ、シシリア風イタリアン・ソーセージ、スペイン風チェリソー・ソーセージは、英国内外の賞も受賞した味も折り紙つきの味を誇っている。

毎週木曜の深夜過ぎ、ピーターさんはみずからソーセージやハム・ベーコンなどの製品を小型トラックに積み込み、数人のスタッフとともにロンドンに向かう。片道6時間という長い道のりだ。その週に製造したもののみをボロマーケットで直接消費者に販売する。スーパーマーケットの冷蔵庫に何週間も放置されるわけではないので、保存料・添加剤などは、はたから必要ない。シフィールドファームのソーセージは、素材から製造過程まですべて消費者の目に透けて見える、おいしくて安全な、まさにむかしながらのソーセージだ。

毎週末ボロマーケットでは、ピーターさんあるいはディレクターのロバートさんが、ボウラー・ハットと呼ばれる英国北部の伝統的な山高帽をかぶり、赤茶色のチョッキに緑のスカーフをまいた華やかないでたちで、みずから顧客の相手をしている。彼らは客からの質問に丁寧に答え、たとえソーセージ1本だけを求める客に対しても笑顔を絶やさない。シフィールドファーム・ソーセージの素朴で深い味わいの陰には、それを支える素朴で温かい人柄があり、というわけだ。