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  ホーム特集原マサシ「イギリスを斬る」>ジョージ・ハリソン

 
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お酒との付き合い方
極私的イギリス人
ローリング・ストーンズ
ジョージ・ハリソン
ジャムセッション 1
ジャムセッション 2
パブ徘徊のススメ

ジョ−ジ・ハリソン

普段、自炊する際に、僕の好きなレシピの一つに市販のタマリンド&生姜のペースト・ ソースを使ったチキン・カレーがある。鶏はムネ肉が良い。酒で洗い、オイルで炒めて、後はこの真っ赤で酸っぱいペーストをからめ、湯を足して少々煮て終りだ。タマリンドは日本人には馴染みのない香辛料である。僕も知らなかった。

最初にその味を 口にしたのが、何故か近所のイタリア人の経営するカフェで、ランチのチキン・カレー を食した時。紫蘇(シソ)とも梅干しともとれる、強烈に酸っぱく、それでいて様々な香辛料と生姜の風味で後味がとてもスパイシーで、今、この原稿を書いていても喉がなる。 さすがカレー先進国イングランド?!

ところで英国では、さまざまな仕様の瓶詰めのカレー・ペーストがスーパーやオフ・ライセンスの店(日本のコンビニに近い)で手に入る。それらは日本だとカレー・ルーにあたると言ってよいだろう。勿論、そんなカレー・ディッシュは本場インドより、この国に輸入され、形を変え、今では日本の国民食にもなった。

これを音楽の世界にあてはめると、ワールド・ワイドに成功したインド人、ラビ・シャンカールというシタール奏者がいる。彼は、世界に向けて、万人に向けて、分かりやすい切り口でもってそのインドの伝統的な音楽を料理し、沢山の人の心を掴んだ。時は60年代後半、モンタレー・ポップの演奏を映画で耳にした僕も非常に興味をもっ た。ちなみに今や世界最高峰のアーティストとなったノラ・ジョーンズは彼の娘である。

ロックの世界に、最初に全面的に東洋の神秘、インド音楽のその音学性と精 神性を持ち込んだのが、ストーンズのブライアン・ジョーンズと、ビートルズのジョー ジ・ハリソンである、と思う。双方とも、僕が非常に心打たれるアーティストであるが、ギタリストという視座から言うと、ジョージ・ハリソンという人は、本当に不思議なギターを弾き、僕の心を捉えて話さない。彼は、前記したラビ・シャンカールに師事し、そのエッセンスをたくさんビートルズに持ち込み、さらに後の自分のギター・スタイルを確立させた。

ギター奏法において、スライド・ギターというテクニックがあるが、70年代当時の ヒットチャート内の曲達からは、実に沢山それらの奏法をを聴くことができる。もともと ギターと言うものはフレットが付いていて、バッハの平均率にのっとった「限られた」世界のモノである。ただし、ピアノと言った弦楽器よりも曖昧である完成度が幸いして、ベンドしたり、ヴィブラートしたりという非常にエキゾティックなニュアンスを産むことができる。そこに、ギターというもののマジックがある。前記した、平均率の対極に位置する楽器はフレットがないモノであり、西洋ではバイオリンであったり、 インドのシタールであり、後者はまさに、エキゾティックの極みである。これらのフレットのない世界をフレッテットのギターでやってしまったのがスライド・ギター奏法である。

いろいろとスライド・ギター奏法にはルーツがあり、素晴らしいプレイヤーもたくさんいるが、とりわけ、僕はこのジョージ・ハリソンの演奏に胸を打たれる。彼は数年前、病気で亡くなってしまったが、彼の遺作となった『ブレイン・ウォッシュド』には、御機嫌 なナンバーに、素晴らしいスライド・ギター奏法が納められている。中でも6曲目の 「マルワ・ブルース」を聴いてみて欲しい。ギターが泣くってこういうことなのではないのだろうかと思う。アルバムとしては『オール・シング・マスト・パス』がお勧め。 ここにはゲストでエリック・クラプトンが参加している。しかし、ジェフ・ベックや エリック・クラプトンは最高峰のテクニックを持っているが、僕にはジョージのスラ イド・ギターが心地いい。ベックとクラプトンは聴いているとなんだかエライ人と付 き合っているみたいで尻の座りが悪い。ジョージ・ハリソンは、「スパイス」が効いているくせに、とてもあたたかく、「やさしい」のである。

原マサシ