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  ホーム特集原マサシ「イギリスを斬る」>極私的イギリス人

 
  イギリスに関する文化、スポーツ、歴史、映画について

事の始まり
はまるロック 1
はまるロック 2
お酒との付き合い方
極私的イギリス人
ローリング・ストーンズ
ジョージ・ハリソン
ジャムセッション 1
ジャムセッション 2
パブ徘徊のススメ

極私的観点のイギリス人

例えばパブなどで飲んでいて、まあ、そこが社交場である限り、絶えず皆(客)は今日の話題作りに必死である。

ここイギリスでは、行き付け(近所)の店のことを「ローカル」という。ぼくの住み暮らす南ロンドンのとあるローカルパブに、次のライブの宣伝を兼ねてわざわざ出向いていった。

「や〜、原君、昨日は大分飲み過ぎていた ねえ、で、いつもの?」といった具合で、ぼくはわざわざ二日酔いの身体にムチを打って出かけたのであるが(家から5分)、今日は人がやたらと多い。フットボールのシー ズンは先日終わった。じゃぁ何故?と思っていると、この英国で人気のある俳優が来ていたらしい。

で、その店の友人に聞いたところ、何でも彼は1、2パイント飲んで帰って行ったそうだが、彼がふらっとパブに寄る前には常連の客10人程しかいなかった が、そのローカルの連中の連絡網で、30分後には200人近くに膨れ上がったそうだ。面白い。

ちなみに、その俳優を見た人間のほとんどが、彼の事を「ナイスガイだっ た」と言っていた。明日にはきっと、「彼と飲んだ」となり、明々後日には「友達」 になっているのであろう。わかる。手にとるようにわかる…。 何故なら、ぼくはこの国に来て、のべ100人以上のジョン・レノンの「友達」に会い、100人以上のロリー・ギャラガーの「同級生」と会い、100人以上のエリッ ク・クラプトンの「元彼女」に会ったからだ。一度見かけたら知り合い、一度話したら友達、 一度飲んだら親友、日本でもこんな感じの業界人はいるが、ここロンドンのローカル パブの連中は、それを見栄で言っているわけではなく、本気でそう思っている節があり、 いたって真面目なのが面白い。

と、思いつつ、先日はポール・ウェラーのエンジニア に会った。ウェイブリッジというサリー州の方にスタジオを持っているとの事だ。 「へぇ、そいつはおどろきました。彼は元気ですか?」と、半ば呆れて訪ねると、 「あそこにいるよ」と彼が指を差したその先に、なんと本人がいた。これも面白い。

ところで話を元に戻すと、ライブへの誘いを済ませた僕はいい気になって飲んでいると、酔っぱらいが、「自分、なかなかええギター弾くらしいやん、CDないの?」と、厚かましく聞きさらすので、「ありますが、この国U.Kには今のところ、過去リリースしたアルバムのディストリビューションがありませんので、ライブに来ていただくか、インター ネットでアメリカから購入して下さい」と告げた。「フン」みたいな感じで立ち去っ て行った彼に、気分を害したぼくは、クスクス笑っているまわりの連中に散々くだを巻いて帰宅。

後日、ベースプレイヤーから連絡があり、非常によい条件のブッキングのオファーがあったと連絡を貰った。まあ、とある会場からなのだけれども、そこのブッキング担当者が彼だったのである。後で聞いたら、ローカルの常連が、僕の話をしてくれていたらしい。初めっから言えよ!とも思うが、この国の人間は日本人と似ていて、非常 に遠回しに人と接する。僕のアテテュード(態度)を面白がっていたのだろう。ここはモンテ ィ・パイソンを産んだ国だ。渡英の際は、サーカズムにのっとったコミュニケーショ ンに翻弄されぬよう、口から先の技術に磨きをかけておきましょう。

原マサシ