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イングリッシュ・ガーデンとは
長い間開花を楽しめるマイルドな気候 長い間開花を楽しめるマイルドな気候
暖流の関係で緯度が高くても暖かく、花が咲く時期が長いイギリス。草花がもっとも美しい季節は、5月下旬から8月上旬にかけてで、このサマータイムに暗く長い冬がうそであったかのように一気に草花が生い茂り、花が咲き乱れる。日本とイギリスでは基本的に気候が異なり、植物の生育状況も育ちやすい植物も違う。日本では次から次へと開花する花が変わるのに比べ、イギリスでは長い期間にかけて多種多様な花が咲き乱れるのだ。このためイギリスは日本よりも季節の植物を長くじっくりと味わうことができる。8月に入ると、すでに秋の気配が忍び寄り、9月を過ぎれば秋の花々も一年に最後の美しさを謳歌して、間もなく落葉樹の落ち葉に覆われた地面を散策するのも、またロマンティックな風情である。
 庶民の生活とガーデン
イングリッシュ・ガーデンといえば、お屋敷の庭や植物園、あるいはプライベートな感覚のコテージ・ガーデンなどを思い浮かべる人も多いことだろう。でも、わざわざ大掛かりなところに出向かなくても、身の回りのすぐ近くで探してみるのもまた楽しいもの。例えばロンドンのような大都会ではパークあるいはスクエアと呼ばれる市民の憩いの場がたたくさん見られ、そこでは昼下がりに木陰で日向ぼっこをしたり昼寝をしたりしている光景が当たり前。ちょっとした郊外ともなれば、木々や野草に囲まれたフットパスやサイクリングロードもたくさん見ることができる。そうした生活に密着した形でのガーデンを味わうのが、緑と花に触れるイングリッシュライフの醍醐味でもある。

ロンドンなどの都市部では、庭のないフラットに住んでいる人でも花や木の息吹を上手に取り入れている。バルコニーなどの限られたスペースを生かして花や野菜づくりを楽しんでいる人が多く見られ、また、集合住宅の中でもフラワーポットと家の壁に囲まれたパティオのベンチでおしゃべりをする人々の姿もごく自然な光景。ドアの横や窓際にハンギングバスケットを華やかに飾って、住む人だけではなく訪れる人や道行く人の目を楽しませてくれている。

テレビやラジオでも、シーズンともなればガーデニングについての番組が目白押し。イギリスの家屋には一般的にフロント・ガーデンといわれる玄関先の庭のスペースがあるが、そこはほんのイントロダクションだ。フロント・ガーデンを抜けて玄関から家に入り、部屋や廊下を抜けたその先にあるバック・ガーデンこそ、本当の意味でその人のライフスタイルが反映された、自分だけの空間が広がっている。
イングリッシュ・ガーデンから広がる楽しみ イングリッシュ・ガーデンから広がる楽しみ
ガーデンでアフタヌーンティーに読書、あるいは庭でとれたハーブを料理に添えて・・・。ガーデンは、イギリス的ライフスタイルとは切っても切れない間柄。ガーデンは自然との共存の場であり、一人ひとりの個性やライフスタイルを実現する場なのだ。日本人が味覚で季節の変化を楽しむように、イギリス人は庭の植物で季節を楽しんでいるともよく例えられる。

ガーデニングというと、かつては亭主が妻から唯一逃れられる場所、などとよく言われたもの。けれども現在ではそんなことなく、夫婦そろってガーデニングを楽しみ、若い人たちにとってはおしゃれな趣味として愛好されるようになっている。趣味で始めたガーデニングが高じて、アロットメントと呼ばれる土地を借りて、本格的に野菜栽培を楽しむ人も増えているとか。

ガーデニングから応用されるものは実に幅広くある。料理やフラワーアレンジメントはもちろん、インテリア生活雑貨やファッションのデザイン、植物学、エコロジー研究、それにアロマテラピーやフラワーレメディなど。ちなみにフラワーレメディはアロマテラピーと併用されるものとして最近注目が高まっているものだ。香りや色、形、手触りなどを通した花の癒し効果のための研究が進んでおり、イギリスはこの分野の先進国である。人々の心をいつも癒してくれるイングリッシュ・ガーデン。これらも皆、花と緑を愛する心があってこそのことだろう。

また、ガーデンニングや植物たちにまつわるすべてが、体系的な学習がしやすい環境であるのもイギリスの特徴。たくさんの留学生が、本場の園芸のノウハウや植物学を学ぼうと世界からやってくる。語学研修とあわせて行うコースも人気がある。
花と緑を生活に取り入れる 花と緑を生活に取り入れる
イギリスの町を散策していると、道端や駅構内のところどころに、花屋が出店していることも多く見られる。パーティのお呼ばれに、プレゼントに、そして自分や家族へのご褒美や気分転換に・・・と、ごく気軽に花束を購入していく人の姿もよく見かけられる。

ロンドンなら、ニュー・コヴェント・ガーデンのフラワー・マーケットが有名。またコロンビア・ロードのフラワー・マーケットも、庶民がたびたび足を運ぶエリアとして活気がある。もちろん地方都市では路地のマーケットやスーパーには必ず生花のコーナーが用意されていて日々の生活の中で親しまれている。

植物たちの魅力はインテリアにも及び、観葉植物やラワーアレンジメント、ボタニカル・アートの絵画や、壁紙、カーテン、ソファなどのファブリック類にも草花をあしらったものを上手に取り入れたりしている。また、アンティークショップでは味わいのあるアンティークの植物画のレプリカや原本を手に出会えることも。書籍店や額縁ショップなどでは、実際の新品のアートや画集が豊富だ。ウィリアム・モリスらが精力的に活動したアートアンドクラフト運動に見られるような、自然の要素をふんだんに取り入れる考え方は、今日にも脈々と受け継がれている。

「ウェッジウッド」などの有名な陶器のブランドでも、美しいボタニカルなモチーフが往年の人気デザイン。ファッションにしても日本でも人気の「ローラ・アシュレー」のように、美しい草木のモチーフを取り入れたナチュラルなデザインの服たちも親しまれている。生活全体で自然に触れ合っていたいというイギリス人の心を垣間見ることができるだろう。