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緊急レポート ドイツW杯予選 イングランド対パラグアイ
イングランドファンが、まだかまだかとお腹を空かしに空かして、待ちわびていた試合「イングランド代表のW杯開幕戦」が、ドイツ西部の都市フランクフルトにおいて、6月10日午後3時、ついにキックオフされた。彼らにとって、前日の開幕戦「ドイツ対コスタリカ」が、サイドディッシュと例えるなら、地元のチームの試合は、まさに待望のメインディッシュ。この日の、フランクフルトのバルト・スタジアムには、3万人近くのイングランドサポーターが駆けつけ、さらにウィリアム王子も熱視線を送っていた。

執筆:坂田 草介

フランクフルトは、気温が30度までに達しようかという晴天。太陽の日差しを溢れんばかりに浴びながら、キャプテンマークをとり巻くデービッド・ベッカムを先頭に、イングランドイレブンが現れた。その時の彼らの表情は、充実そのものという感じ。それもそのはず、W杯開幕前の最後の準備試合、強豪とはいえないジャマイカ相手だとはいえ、怪我のエース、ウェイン・ルーニーの不在を払拭するがごとく、6-0の大勝をし、最高の形で、この日を迎えたのだから。

イングランドのナショナル・アンセムが鳴り終り、サポーターの歓声をまとったイレブンがそれぞれのポジションにつき、メキシコ人の主審マルコ・ロドリゲスの笛を待つ。笛の瞬間、ファンだけでなく、選手達も待ち望んだサッカーの最高峰の舞台、選ばれた者しか立てない4年に1度の尊いワールドカップが幕を開けた。

初戦の重要性――どんなサッカーの専門家や解説者も大会前には、初戦に勝つ、または負けないことを声高に説く。初戦の出来不出来によって、その後の進む道程が決まると言っても過言ではないのだ。イングランドも例外でなく、試合前のイングランドのエリクソン監督の「何としても勝つ。勝ち点3をとりたい。」という強い意志からの言葉が物語っている。このパラグアイ戦の結果が、イングランドのW杯における将来を左右する――。

さて、イングランドはそんな「何としても勝つ」という強い気持ちとは裏腹に、穏やかに、試合を開始した。彼らには、初めの試合という精神的なプレッシャーは、全く感じられないようだった。そして、スタジアムのサポーター、さらにイングランド各地に設置された大型スクリーンで食い入るように観戦する大勢のサポーターを歓喜の渦に巻き込む瞬間が、いきなり訪れる。左サイド、ペナルティ・エリアからやや離れた位置においてファウルを受け、フリーキックを奪取。デービッド・ベッカムが、ボールをセットし、足の内側で、ボールの下部を、滑らかに擦りあげるように蹴られたボールは、美しい弧を描き、ゴール前で落下、パラグアイの守備の支柱でキャプテンでもあるガマラの頭をかするようにして、ゴールに吸い込まれた。この開始3分のゴールは、イングランドに勇気を与え、パラグアイに動揺を与えた。それぞれのチームのキャプテンの仕事が、試合前半の主導権を左右させる結果となる。勢いを増すイングランドは、狙い通りのサッカー、つまり長身のフォワードのクラウチの頭を狙い、その落としたボールを左右に展開し、そのサイドからのクロスをフォワードがゴール前で合わせるという形を随所に作り出す。さらに、ゴール前中央で、パラグアイのプレッシャーがないときには、ジェラードとランパードの中距離からの強烈なシュートが飛び交い、パラグアイのディフェンスを脅威に陥れた。ボール支配率、イングランドの60%に対し、パラグアイ40%という数字が示すように、前半のイングランドは、ほぼ完璧な試合運びをしたといえた。

しかし、後半のイングランドは、大きく違った。前半とは、打って変わって、パラグアイに試合を支配されてしまう。パラグアイが1点ビハインドということで、全体的に選手のポジションを上げ、攻撃の勢いを増してきたということもあるが、それ以上に試合後にベッカムが語ったように、この日の暑さがイングランドの選手の体力を消耗させ、思うようなサッカーを徐々にできなくさせていった。さらに、エリクソン監督の選手交代「FWオーウェン→MFダーニング」によって、悪循環を招いてしまう。前半から、機能していたフォワードのオーウェンとクラウチのコンビを解消し、監督曰く「ボール保持率を高める」ためのこの交代は、イングランドの攻撃の意図を曖昧にし、パラグアイに決定的ともいえるチャンスを度々、創出させる結果を生んでしまった。ただし、時間を追うごとに、パラグアイの選手にも疲労が見え、結局イングランドゴールを割るには到らなかった。そして、90分経過のホイッスルを主審が鳴らしたとき、イングランドの勝ちは、決まった。

試合後、サッカーの母国であるイングランドの解説者が「後半が悪い。何故、フォワードのオーウェンを代えたのか?」とまくし立てていたが、これは、贅沢な批判ともいえる。このような短期の決戦の舞台での初戦の重みや勝つことの難しさを考えた時、内容より、とにかく勝利が最重要課題であった。確かに、気候への対応や監督の采配等のネガティブな面は、解決しなければならない。ただし、最初の難易度の高いタスクをこなしたイングランド。この勝利により、道はさらに拓け、彼らのファンが見る夢への誘いは、長く続くかもしれないという感触は確かに残った。
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