特集
  ホーム特集英国サッカー・W杯ドイツW杯>イングランド対エクアドル

 
  イギリスに関する文化、スポーツ、歴史、映画について

  英国サッカー・W杯
>>  サッカーの歴史
>>  フーリガンの歴史
>>  プレミアリーグ10選
>>  サッカー観戦記 1
>>  サッカー観戦記 2
>>  ドイツW杯
 ·  イングランド代表
 ·  対パラグアイ戦
 ·  対パラグアイ戦・談話
 ·  対トリニダード・トバコ戦
 ·  対トリニダード・トバコ戦・談話
 ·  対スウェーデン戦
 ·  対スウェーデン戦・談話
 ·  対エクアドル戦
 ·  対エクアドル戦・談話
 ·  対ポルトガル戦
 ·  対ポルトガル戦・談話
緊急レポート ドイツW杯-決勝トーナメント1回戦 イングランド対エクアドル

ケルン駅天井に描かれたベッカムの壁画
サッカーはとてもシンプルなものだ。攻撃時には、いかにスペースを作って、そのスペースを有効活用することによって、得点するための形を生み出す。そのスペースは、二次元だけでなく、三次元の空間も意味する。つまり、ヘディングやボレーシュート(浮いているボールをシュートすること)なども攻撃のための効果的な手段となっている。また、守備時には、いかにその相手の攻撃のためのスペースを消すかによって、失点の確率を減らすことができる。サッカーは、常にその「スペース」がキーワードとなる。

しかし、この試合において、イングランドのエリクソン監督には、「スペース」の概念がなかったか、または把握できなかったのかもしれない。エリクソン監督は、今大会初の試みとなる怪我からの完全復調の兆しが見えるウェイン・ルーニーのワントップ(FWが1人)に、守備的MFに今大会初出場となるマイケル・キャリックを据える布陣をしく。この布陣は明らかな失敗となる。

エクアドルDFが自陣に下がり気味のため、そのDFとGKの裏の「スペース」が狭くなり、「スペース」に走りこんでボールを受けることを得意とするルーニーがシュートまでもっていくには、かなりの難題となっていた。さらに、このフォーメーションは、デービッド・ベッカムやジョー・コール等の精度の高いクロスを上げられる選手にも悪影響を及ぼしていた。背丈のないルーニーをめがけて、ヘディングシュートのための高めのクロスは上げられず、低いクロスに反応できたとしても、1トップのため、1人でエクアドルの数人のディフェンダーと格闘しなくてはならない。これでは、いくら天才ストライカーでもできることは皆無に等しかった。

イングランドは、クロスからのヘディングシュートやダイレクトシュートという最も彼らが得意とする三次元の「スペース」を利用した手段を、監督が決めたフォーメーションのため、放棄せざるを得なかった。何故、これまでの試合で、その長身を利用してのヘディングでイングランドの攻撃を活性化させていたピーター・クラウチを起用しなかったのか、そして何故、1トップで望んだのかとエリクソン采配に数多くの疑問符が浮かんだ人々も多かったに違いない。さらに、あまりに攻撃という攻撃の形を見出せない我が代表に、試合前にビールを大量に飲んでいないにも関わらず、猛烈な眠気を催したイギリス・サポーターも多かったはずだ。

この、前線のスペースのない所にグラウンダーのロングパスを蹴ってはルーニーを走らせるだけのサッカーは、ただただ「どこかに落ちているグッドラックを探している」だけのように見えた。ボール支配率では、エクアドルを上回っていたが、効果的な攻撃をしていたのは明らかにエクアドルの方だった。

ただし、イングランドには、ツキがあった。前半序盤のエクアドルFWカルロス・テノリオがGKロビンソンと1対1になった場面は、そのシュートが身体を投げ出してスライディングに入ったDFアシュリー・コールの足にかすかに当たり、ボールはクロスバーを直撃。これは、両チーム合わしての最大の決定機であり、まさしく九死に一生を得る形だった。さらに、イングランドは「グッドラック」を掘り当ててしまう。それまで、決定的なチャンスが皆無だったにもかかわらず、60分にゴール前のフリーキックをベッカムが突き刺した。

これは鮮やかなゴールだったが、意図した攻撃からの得点ではなく、ましてやエクアドルのリズムで試合が展開されていたことを考えると、限りなく偶然の産物に近いものだった。得点後もイングランドの攻撃は活性化されず、エリクソン監督はリズムを変える交代をすることもなく、そのただダラダラした試合はベッカムの虎の子の1点を守りきり、90分間を終えた。

イングランドは、どんな強豪とも伍して戦うことのできるタレントを抱えている。ただし、そのタレントの使い方を間違えてしまうと、このような試合展開となってしまう。次のベスト4進出をかけて戦う相手は、名将ルイス・フェリッペ率いるポルトガルだ。前回の日韓大会で、ブラジルの監督だったフェリッペは、偶然にも同じシチュエーション、準々決勝で、エリクソン率いるイングランドを打ち負かしている。そして今回、因縁の対決という形になる。エリクソン監督が、再び気まぐれな「采配」を振るようだと、イングランドの勝利は難しくなるだろう。そのため、サポーターはエリクソン監督の「采配」にも「グッドラック」を願うより他にないかもしれない。

執筆:坂田 草介

Next