イギリスの映画
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映画にのめり込むイギリスの素顔をイギリス映画作品はもとより、監督、俳優、映画原作など、様々な角度から分析してみる。
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エリザベス ゴールデン・エイジ
イギリス映画 ジェームズボンド 007
「映画の中の人物に魅せられた観客は、よくその人になりきって映画館を後にする。ここイギリスにも映画終了後、イギリス男性の心をしびれさせる男がいる。その人の名を「ジェームズ・ボンド」という。
ジェームズ・ボンドは、イギリス政府の情報部、MI6に属する第一級国家公務員。コードナンバー「007」と呼ばれるスパイだ。パブリックスクール出身、ケンブリッジ大学中退。特注の煙草を喫い、こだわりのドライマティーニを愛飲。育ちの良さと孤独な影が魅力となって、行く先々に恋人を持つ。
更にスポーツ万能で「殺人許可証」を得る程仕事のできる男 - と細かく人物設定された彼は、イアン・フレミングが作り上げた架空の人物である。
フレミングは14作の007小説をこの世に残している。しかし世界中に彼の存在が知れ渡ったのは、映画の功績が大きい。
映画では、ショーン・コネリーを筆頭に5代目ピアース・ブロスナンまで、イギリスの流れをくむ俳優達が007に扮している。それは007その人が、「イギリスのジェントルマンである」という演技以上のものを要求する役だからかもしれない。
巷のボンドファンには「ショーン・コネリーが007そのもの」という意見が多いが、フレミングは当時このキャスティングには反対だったという。その理由は「彼はジェントルマンではない」から。 ショーン・コネリーはスコットランドの貧困層出身で、俳優になる前は職を転々としていた。
一方のフレミングは、スコットランドの名門出身でイートン校を出て、海軍情報局でスパイとして働いた過去を持つ。また、私生活でも特注煙草を愛煙し、バハマに別荘を持って多くの恋人を招待した。まるで007そのもののような生活ぶりであったから、自分の知る世界とは違う所から来たこの若い俳優に、007の影を見ることができなかったようだ。
こんな背景から、フレミングは「007はあなたがモデルか?」という質問を頻繁に受けたが、これに対して彼は「No」と答えている。
しかしフレミングは、自分を「正真正銘のジェントルマン」と信じ、それを誇りとしていたようだ。彼によれば「『ジェントルマン』とは生まれついてのもので、どのように行動しても、その個性と洗練さと余裕を隠すことができない」のだという。
死ぬ直前に看護婦に「世話をかけるね」と声をかけたというフレミング。その余裕の態度は、生死をかけた情報戦の中にあっても遊び心を忘れない007というキャラクターに共通している。
007は、フレミングの理想とする「イギリスのジェントルマン」を表現したものだったのだろう。大量消費の画一化社会になり、個性溢れるジェントルマンが失われて久しいイギリス。そんな中、最後の「本物の」ジェントルマンが創り出した「架空の」ジェントルマンが、巷のイギリス男性の「ジェントルマン魂」に火をつけない訳がない。007の不動の人気は「ジェントルマン」へのノスタルジーにあるようだ。
執筆者: 土居由美子
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