『ダ・ヴィンチ・コード』が売れる理由
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ミステリー・スリラー小説としての娯楽性の高さもさることながら、物語を通して指摘されるキリスト教が内包する矛盾が、読者心理をそそるいわくつきの小説だからである。
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『ダ・ヴィンチ・コード』が売れる理由
『ダ・ヴィンチ・コード』が売れ続ける理由。それは、ミステリー・スリラー小説としての娯楽性の高さもさることながら、物語を通して指摘されるキリスト教が内包する矛盾が、読者心理をそそるいわくつきの小説だからである。
一般的なキリスト教のイメージを覆す、人によっては挑戦的ともとれるプロットは、各方面に波紋をなげかけ物議をかもしている。大げさに言えばこれまであえて大々的に触れられなかったキリスト教の影の部分に一石を投じる問題作なのだ。ただし当の作者ブラウンは、「長い歴史の中でささやかれてきた事柄を小説にしたにすぎない。反発があっても大丈夫」といたって冷静だ。
小説のなかで、ブラウンは架空の登場人物そしてレオナルド・ダ・ヴィンチをはじめ歴史に名をつらねる実力者が所属していたという秘密結社シオン修道会、ローマカトリック教会、カトリック系宗教組織オプス・デイといった実在の存在を通して、作者なりにキリスト教の神性や真意の探求を試みる。その意味では、きわめてキリスト教的ともとれる。
一方、『ダ・ヴィンチ・コード』に横たわる倫理観への反論も多い。ローマカトリック教会は(リンカン大聖堂の前で反対行動をした尼僧と同じような考えで)出版禁止を求め、小説の中では悪役サイドに甘んじたものの特に厳しい言明は控えているオプス・デイも、映画封切りの際には年齢制限付きとすべきと主張するなど、保守派からの風当たりが強いのも事実だ。それでも世界で売れ続け、ゆえにキリスト教への関心が世界各国で高まり続けているとは皮肉な構図である。
一般的に宗教観の薄い日本人であれば、『ダ・ヴィンチ・コード』を純粋に娯楽として読む人が比較的多いのではないだろうか。話の中で描かれている歴史や情報をすべてうのみにすることは危険である。ただしこれをきっかけにして、キリスト教を信望するしないにかかわらず、多くの人が、西洋文化と思想宗教のあり方、歴史観などを再考察するまたとない機会を得ることは確かだろう。