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007カジノ・ロワイヤル:人間味あふれるジェームズ・ボンド
007カジノ・ロワイヤル バック・トゥ・ベーシック
シリーズ21作目となる「007カジノ・ロワイヤル」(007 Casino Royale)は、ある意味で過去の作品群とは一線を画すものといえるだろう。007シリーズといえば、荒唐無稽な展開とボンドガールのお色気というのが常だったが、監督マーティン・キャンベル(Martin Campbell)率いる制作陣が「基本に立ち返る」と銘打っていたとおり、本作ではリアルな「人間ジェームズ・ボンド」(James Bond)が生き生きと再現され、極上のエンターテインメントに仕上がっている。

六代目ジェームズ・ボンドを演じるのは、英国でいまもっとも注目される俳優のひとり、ダニエル・クレイグ(Daniel Craig)。ダニエル・クレイグ(Daniel Craig) & エヴァ・グリーン(Eva Green)ボンドの最初で最後の運命の女性ヴェスパー・リンド役には、しなやかな美しさのあるフランスの注目女優エヴァ・グリーン(Eva Green)。そしてスパイものの話にはつきものの悪役ル・シッフルにデンマークのベテラン俳優マッツ・ミケルセン(Mads Mikkelsen)、ボンドの上司Mには、いまや007映画シリーズには欠かせなくなった英国の大女優ジュディ・ディンチ(Judi Dench)と、世界で注目されるキャストそして制作クルーが結集した。

映画の中では、少々粗野で荒削りな青年がさまざまな出来事を通して、ジェームズ・ボンド=007として洗練を極めていく様が描かれていく。粋な会話からアクションあり、殺しあり、裏切りとかけひきありと007に欠かせない要素が網羅されつつ、ボンドにとっては「最初で最後の」美しくも悲しいラブロマンスも絡んでくる。世界各地でロケがおこなわれ、CG合成にありがちな不自然さがおさえられているのも魅力。クラシカルなスパイものの魅力をあらためて発見する人も多いのではないだろうか。

ダニエル・クレイグ(Daniel Craig) 6代目ボンド ダニエル・クレイグ
もちろん、「アストン・マーティン」のボンドカーや「ブリオーニ」のテーラードスーツ、「よくシェイクした」マティーニといったおなじみのボンドグッズやボンドガールとのセクシーなお色気シーン、そしてアーティスティックなオープニングアニメなど、これぞボンドといえるお決まりのツボも健在。

それでいてどこか清潔感が損なわれず、ほどよく締まった雰囲気で話が展開していくのは、キャンベル監督ならではの軽妙な映画づくりの手腕と、極端な派手さや奇抜さを狙わない練られた脚本、それに6代目ボンドのダニエル・クレイグの役者名利だろう。

5代目のピアース・ブロスナンがボンド役を降りた後、6代目ボンドの座を巡ってはさまざまな有名俳優が候補にささやかれていた。最近S・スピルバーグ監督作品の話題作「ミュンヘン」にも出演しその存在感を増していたクレイグだが、まさか自分がボンド役を本当に射止めるとは思っていなかったとか。

クレイグに配役が決まってからの前評判では、「彼で大丈夫なのか?」といぶかしむ声もあった。しかし封切後の評判は上々。クレイグは持ち前の存在感と鍛え抜かれた肢体、そしてスマートな身のこなし(そして着こなし)で、強さと繊細さを秘めた新生ボンドを好演し、シリーズの新境地を開いている。

すでに次回作に向けてクレイグの主演が決まっている。等身大の“21世紀型”ジェームズ・ボンドが今後どのように成長し、新しい007アドベンチャーを展開してくれるのか楽しみだ。
執筆:福嶋美香 2006年12月