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インターン体験記(2)
それからの私の生活は多忙を極めた。このプログラムに関する資料を集めると同時に、体験記を多数読んで夢を膨らませた。どうせ「日本を教える」のであれば日本語も教えられるようになろう、と日本語教師の資格を取得すべく勉強を始め、同時に資金作りのためのアルバイトの掛け持ちを始めた。生活の全てが日本を紹介するための材料足りうることを発見した私は、この「材料集め」にも熱中した。新聞の広告を集め、テレビのコマーシャルをビデオに撮り、自分が何をして日常を過ごしているか、家族や友人の日常生活をも記録し、準備は万端に思えた。

ここで一つ侮っていたのは「英語」だった。現地に着いてからやればいいや、と考えていた私が甘かった。研修国として選んだ英国に着いてすぐに現実に直面する。周囲の人が何を言っているのかさっぱり分からないのだ。研修校に到着し、挨拶をされるも理解不可能。何か聞かれてもできるのは笑顔を返すだけ。相手の言っていることが分からないのにどうやって日本を紹介するのか。私の「日本を教える」意気込みは、ものの見事に萎んでいった。

それからの数日は、何をするでもなくあてがわれた部屋で一日の大半を過ごす、という非常に情けないものだった。大量の広告以外の日本語のものを持っていなかった私にとって暇つぶしになるものと言ったら英語の新聞や雑誌、英語のテレビ番組以外になく、理解できないイラツキから最後にはこれにすら嫌気が差し、自分が何をしに来ているのか忘れて、早くも帰国日までのカウントダウンを始めた程である(研修期間は一年間だった)。

そんな私を救ってくれたのはEFLの先生方だった。私がやる事もなくボーっとしているのを見かねて、英語のレッスンを他の留学生と共に受ける機会を提供してくれたのだ。更に寮制の学校である為、その簡単な仕事を手伝う機会にも恵まれ(実際これは英語を上達させる上で非常に役立った)、こうして少しずつ私のスケジュールは埋まっていった。それでもこの「英語が出来ない」という事実は私を普段以上に消極的にし、自分の目的をたどたどしい英語ではあるが伝え、少しずつ活動する場所を広げていくことに成功したのは私が学校に着いてから随分経ってからだった。

このことに関して一つ、私にとっての非常に重要なエピソードがある。来る前の過密スケジュールに比べるとスカスカと言っていいほどの日常を送っていた私は、今までにないこの膨大な「自由時間」に非常な戸惑いを覚えていた。この時私は、仕事一筋でやってきたサラリーマンが退職後に覚える戸惑いに似たものを感じていたのだと思う。そんな時、先生の一人が私に「Do you have any hobby?(何か趣味はあるの)」と聞いた。普通、「What is your hobby?(趣味は何)」と聞くだろう。その時受けたショックは大きかった。自分から動かなければ何も得られない。そんな当たり前のことをこの時になってようやく気づかされたのだ。

それからの私は、この言葉に抵抗するかのようにジョギング、水泳、テニスを始め、その結果体育の授業に参加することになった。日本料理が恋しい、という会話から、料理クラブで日本食作りを頼まれ、また、地理の授業で日本についてやっている学年の授業にゲストとして参加し、日本についての質問に答えたり、日本語に興味がある、と言ってきた生徒数人と日本語の授業を開始したり、誘われたことには全てイエスと答え、できる限りの行事に参加した。結果としてこれが英語の上達につながったのだと思う。

中でも一番上達を助けてくれたのは、寮の仕事、つまり学生たちの世話、である。10代半ばの生意気盛りの少女達を相手に四苦八苦するのは、予定外のことであったが、これが予想以上に英語の上達を助けてくれた。彼女たちの言っていることが理解できなければ会話が成り立たないし、こちらの言うことなど相手は聞くはずもない。発音がおかしいと言って時に笑われ、時に理解してもらえないことも多々ある。何をやるにもメモや手紙を書く必要だった。学生たちの宿題を見たり手紙を読んだりすることもあった。こうした過程を経て、スピーキングや読解力、ライティング力が向上した。私はこんなプロセスを経て、少しずつ自信をつけると共に、自分の居場所を見出していった。

インターンシップ・プログラムは私に素晴らしい体験のきっかけを与えてくれたが、このきっかけをものにするかは本当にその人次第だと思う。私は多くの周りからのサポートを受け、本当にラッキーだったと思うが、「自分から動かなければ何も得られない」ことに気づいていない人は意外と多いのではないか。そんなことを一年経った時に思ったものである。